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本の玹介 倧月敏雄『町を䜏みこなすヌ超高霢瀟䌚の居堎所づくり』

曎新日2021幎2月7日

今回は、運営メンバヌのひずり、田蟺裕子が、『町を䜏みこなすヌ超高霢瀟䌚の居堎所づくり』(岩波新曞、2017)を玹介したす。



この本は、様々な生掻スタむルを支えられる、「生掻の薬箱」のように柔軟で包容力のある町のありかたを教えおくれたす。筆者の倧月敏雄教授は、建築や䜏宅地の蚈画などが専門で、「東京倧孊高霢瀟䌚総合研究機構」に関わっおいたす。これは、高霢化瀟䌚における課題に぀いお、医孊、看護孊だけでなく、瀟䌚孊、法孊、そしお心理孊などの倚様な分野を暪断しお取り組むずいうものです。


筆者本人による玹介文では、こんなふうにテヌマず読者を蚭定しおいたす。

既存の町を、倚様な人々に䜏み続けられるための䜏環境に、どのように぀くり倉えおいくべきかを考えるための曞であり、行政、町づくりの専門家、建築家、そしお、町内䌚や自治䌚や地域で掻動するNPO法人の方々に読んでほしい本である。

UTokyo Biblio Plazaより


「生掻」は思ったよりもずっず広範囲で長期間


この本は、わたしたちが思い描く以䞊に「生掻」ずいうものが広くお長いものだず気づかせおくれたす。筆者によれば、「䜏みこなす」ずは、時の移ろいや家族構成の倉化に合わせお、そのたびに生掻の方法を工倫するこずです。「生掻」ずいうず家のなかを思い浮かべるかもしれたせんが、筆者は数癟メヌトル皋床の「町」の範囲で捉えなおすこずず、「町」が䞀人ひずりの生掻を数十幎にわたっお支えられるかどうかに泚目するこずが倧事だず蚀いたす。


副題の「超高霢瀟䌚の居堎所づくり」からも分かる通り、高霢者に焊点を圓おた本ですが、若い䞖代で足腰が䞈倫な人にずっおも、「家族」や「友人」ずの生掻の工倫に぀いお、ヒントを埗られる内容になっおいたす。「䜏みこなす」の「こなす」は挢字で曞くず「熟す」で、「じゅくす」ずも読みたす。「町を䜏みこなす」ずは、暮らしのなかで䜕かが「じゅくす」こずなのかもしれたせん。


キヌワヌドは「近居」


近居ずは、芪䞖垯ず子䞖垯、あるいは兄匟同士などが、近隣地域の範囲の異なる家屋に分かれお暮らすこずです。近居の家族たちは、ずきどき食事をしたり䌚話をしたりする皋床で、ゆるやかな亀流をしおいるずいう調査結果が玹介されおいたす。近居をしおいる人々のなかには、同居できればそうしたいけれど実際はできないずいう家族ず、同居はしたくないからこそ劥協策ずしお近居しおいる家族ずがあっお、事情はたったく違いたす。近居は、䞀芋するず別居ず䌌た状態ですが、「別れる」よりも「近くに居る」ずいう蚀い方にポむントがありたす。そこに気軜な芋守りのありかたを読み取るこずができるのです。


近居にも通じる芋守りの発想は、政策のレベルにもみ぀けられたす。2005幎から「地域包括ケアシステム」が始たりたした厚劎省のりェブサむト。介護斜蚭を増やし続ける財政的䜙裕がないため、高霢者の生掻をケアする䜓制を、病院や介護斜蚭ではなく、䜏み慣れた地域のなかで敎えるずいう制床が蚭けられたのです。各地域の地域包括支揎センタヌで盞談を受けたり、地域での生掻支揎や介護予防を行っおいたす。


「閑静な䜏宅地」は実は配慮に欠ける


近居に泚目する本曞は、「近い」ず感じる距離、すなわち具䜓的に移動可胜な距離に぀いおも怜蚎しおいたす。䟋えば、赀ちゃんず䞀緒に⟏動する芪にずっお気軜に移動できる距離は400メヌトルくらいで、⟌霢の方であればその距離は200メヌトルほどだそうで、足腰が䞈倫で自由に動ける人の感芚ずは倧きく違いたす。


そこで匊害になっおしたうのが、䜏宅街における建築のルヌルです。建築基準法においお、建おられる建物の皮類や䜿甚目的が制限されおいお、「第䞀皮䜎局䜏居専甚地域」ずいう䜎局䜏宅のための地域では、病院や店舗は䜜れないきたりになっおいたす囜土亀通省のりェブサむトにむラスト付きの説明がありたす。静かで䜏みやすい環境を䜜るために決められたはずのルヌルによっお、⟌霢者が⟃立しお生掻を営むには負担が⌀きくなっおしたうずいう欠点があるのです。この問題に぀いおは、本曞の刊行埌、具䜓的な進展がありたす。今幎2020幎1月、この芏制を緩和しお病院や店舗の建蚭を可胜にしお高霢者に配慮する方針が囜土亀通省にあるずいうこずが報道されたした日本経枈新聞の蚘事「䜏宅専甚地に病院・店舗 高霢者配慮で芏制緩和」2020/1/24。


いろいろなニヌズに敏感な町を䜜るには


様々なニヌズに応えるようにしお町が発展すれば、倚様な䞖代や職皮、生掻様匏を持぀ひずびずを受け入れられるようになるず筆者は提案したす。倚くの人は、人生のいく぀かの段階で芋守りや助けを必芁ずし、いく぀かの段階ではコミュニティよりも個人の自由を欲したす。今は力持ちの若いひずも、30幎埌には幎をずっお足腰が匱っおきお、芋守りや助けが必芁になるかもしれたせん。


生掻スタむルが䌌おいる者どうしで集たっお䜏んだ方が快適なはずだずいう考えるず、町党䜓がひず぀の生掻様匏に合わせお発展しおしたい、柔軟性や包容力に乏しく、地域でケアをしおいくための䜓制が敎いにくくなりたす。筆者は、倚様なニヌズを持぀町を理想圢ずしお提案し、それを「ホワむトノむズ状態」ず喩えおいたす ホワむトノむズずは、いろんな呚波数の音が同じ匷さで含たれおいるノむズのこず。


課題


この本を読むず、自分たちの暮らしの広がりが実感でき、高霢の方や子育お䞭の方の芖点から町を芋るこずができたす。今の自分だけではなく、小さいころの行動範囲や、未来の䜓力に぀いお、想像しなおすこずができたす。


この本が瀺すビゞョンを共有するず、課題も芋えおきたす。自分ずは違うタむプのひずず、どんなふうに近居できるのか、ずいうこずです。ひずりで自由に暮らしたいひずも、誰かにケアをお願いしたいひずも、それぞれが楜しく暮らせる町を目指すには、お互いのニヌズや䟡倀芳を知り、調敎しおいくプロセスが必芁になるでしょう。仕事、趣味、人間関係、䜓力、䟡倀芳など、お互いの違いに぀いおコミュニケヌションを取り、人々のあいだで蚀葉が熟すずき、町を䜏みこなすこずができるのかもしれたせん。


しかし、暮らし方や䟡倀芳が党く違うずき、ご近所さんず話し合うずいうのはなかなか難しいこずです。挚拶するだけでも勇気がいりたす。芋た目から刀断しおしたったり、もずもず持っおいる苊手意識に匕きずられたりせずに、互いの暮らしを尊重し぀぀、助け合えるようなコミュニケヌションを取る方法こそ、たず第䞀の、そしおもしかしたら最倧の課題になりそうです。「探求→究する家」でも、取り組んでいきたいず思っおいたす。



おたけ


本曞ずは関係ありたせんが、WIREDに掲茉された蚘事「タコも『街』を぀くるこずが刀明──✶研究チヌムが発芋した『オクトランティス』の秘密」もチェックしおみおください。単独行動だず考えられおきたタコですが、貝殻の⌭のなかに⟃分ず他のタコの寝床を䞀緒に䜜ったほうが、独りよりも安党で逌も埗やすいず知っおいお、「近居」を実践しおいるようです。




※この蚘事は、「探求→究する家」の掻動の前身である「ラボラトリ文鳥」のブログに掲茉したものを加筆修正したものです「ラボラトリ文鳥」ホヌムペヌゞはこちら。


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